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退職手当共済事業

平成29年度 退職手当共済制度からみた福祉施設職員の状況

福祉施設職員の従業状況

福祉医療機構が運営する退職手当共済制度(以下「共済制度」という。)では、共済契約する法人(共済契約者)から毎年4月1日時点の加入職員の従業状況についてご報告いただいています。今回はその報告の集計資料から、福祉施設職員の従業状況、特に職員の退職の状況を中心にみていきます。 

 

共済契約者数1万6980件

図表1は共済契約者数及び加入職員数の制度発足時からの推移を示しています。共済制度は昭和36年度に開始、当初の共済契約者数は約4000件でしたが平成29年度には1万6980件となり、制度発足当初と比較し約4倍の契約件数となっています。なお、共済契約者の97.8%(1万6614件)が社会福祉法人となっていますので、以下当レポートに示す職員の状況は社会福祉法人に従事する福祉施設職員の状況を示すものとなります。

 

図表1。共済契約者数及び加入職員数の制度発足時(昭和36年度)からの推移グラフ

 

加入職員数84万3027人

加入職員数の推移をみると、制度開始時の約3万人から、平成29年度には84万3027人となり、制度発足時と比較し約27倍もの加入職員数となっています。 なお、平成19年度において加入職員数が減少していますが、これは平成18年度に制度改正が行われ介護保険関係施設への公的補助が廃止されたことに伴い共済契約者の掛け金負担が増加し、制度改正以後の新規加入を止める選択をした施設があったためです。同様に平成28年度にも制度改正が行われ障害者支援施設等の公的補助が廃止された影響から、当該施設の加入職員数が減少しましたが、平成29年度は全体でみるとこの減少を上回る他施設(保育関係施設等)での新規の加入があったため、前年度比で減少するまでにはなりませんでした。

 

1共済契約者あたりの加入職員数

図表2は1共済契約者あたりの加入職員数を示しています。加入職員数が50人未満で全体の74%、100人未満では全体の90%を占めます。制度改正が平成18年度と平成28年度に行われ、介護保険関係施設および障害者支援施設等については、制度改正以後新規加入をしないという選択をしている施設があること、加入が任意の「申出施設」があることから、必ずしも「加入職員数=従業員数」とはなりませんが、おおよその社会福祉法人の従事者の規模を示しています。

 

図表2。一共済契約者あたりの加入職員数

 

従事者が100人以下というのは、企業でいうところの中小企業(中小企業基本法ではサービス業(福祉等)の中小企業を従業員100人以下または資本金5000万円と定義しています。)にあたります。このように大部分の社会福祉法人は規模が小さく、それゆえ財政基盤も脆弱なところが多いと推測されます。共済制度のような全国を対象にしたスケールメリットのある互助の仕組みが必要とされるゆえんです。

 

 

職種別職員数、退職者数、退職率、本俸月額、在籍期間

退職率は対前年度比で減少

図表3は職種ごとの加入職員数、退職者数、退職率を示しています(括弧内は前年度の数値)。職種別でみると、保育士(児童自立支援専門員含む)が最も多く24万人、次いで介護職員の20万人です。この2職種で全体の過半数を占めています。 退職率は全体で11.01%と前年の11.18%を下回っています。職種別にみると介護職員で11.14%(前年度11.36%)、保育士で11.88%(前年度11.93%)となっており、いずれも前年度の退職率を下回っています。

 

図表3。職種ごとの加入職員数、退職者数、退職率の数値データ表

 

図表4は職種ごとの平均本俸月額と平均在籍期間を示しています。本俸月額は俸給表に定める格付本俸と特殊業務手当などの俸給の調整額を加算した額のことで、賞与等は含まれていません。職種別にみると、専門性の高い職種や平均在籍期間が長い職種で本俸月額が高くなっていることがうかがえます。

 

図表4。職種ごとの平均本俸月額と平均在籍期間の数値データ表

 

 

加入職員の3/4は女性

男女別年齢ごとの分布

加入職員の男女別職種別年齢別の分布を示したものが図表5になります。 女性の加入職員数は約63万人であり全体の74.5%になります。福祉の現場は女性に支えられていることがうかがえます。年齢構成で特徴的なところは女性の保育士がきれいなピラミッド型になっており年齢が高くなるにつれ職員数が少なくなっている点です。

 

図表5。加入職員の男女別職種別年齢別の分布グラフ

 

 

保育士の退職率が介護職員の退職率を上回る

保育士と介護職員の退職率経年比較

次に職員数で過半を占める保育士と介護職員について詳細にみていきます。図表6は保育士と介護職員の退職率を経年で比較したものです。平成10年度までは保育士の退職率が介護職員の退職率を上回っていましたが、平成11年度から介護職員の退職率が保育士の退職率を上回りピークの平成17年度には16.0%にまで達し、その後急低下し平成21年度には11.3%にまで低下し、保育士の退職率を下回りました。その後は介護職員の退職率は保育士の退職率を下回り続けています。この状態は8年続いています。 一般に介護職員の退職率は高いというイメージがありますが、加入職員でいうと保育士の退職率のほうが高くなっている状況にあります。

 

図表6。保育士と介護職員の退職率を経年で比較した折れ線グラフ。集計期間、平成2年度から28年度まで

 

保育士と介護職員の年齢別退職率

保育士と介護職員の退職率の差について、図表7で年齢区分別の退職率をみてみます。保育士の退職率は25~29歳で17.4%、30~34歳12.5%であり当該年齢区分において介護職員の同年齢区分の退職率を大きく上回っています。図表5でみたように保育士は女性が多いため、結婚や出産などが契機となり退職をしているのではないかと推測されます。40歳以上の年齢区分では、保育士の退職率は介護職員の退職率を下回っています。ライフステージの変化が影響していることも考えられます。

 

図表7。保育士と介護職員の年齢区分別の退職率の折れ線グラフ

 

 

社会福祉法人に従事している職員の退職率は低い

他産業との退職率比較

次に民間企業を含んだ介護職員の退職率、一般の労働者の退職率との比較をみてみます。図表8は共済制度の加入職員の退職率と「介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)、「雇用動向調査」(厚生労働省)の退職率を比較しています。 「介護労働実態調査」は介護職員と訪問介護員の合計の退職率、「雇用動向調査」では全産業の退職率を示しています。共済制度の加入職員(全職種)の退職率は他の2つの調査の退職率を大きく下回っています。この理由として共済制度では契約者の97.7%が社会福祉法人であるのに対し、介護労働実態調査では民間企業が55.5%、社会福祉法人(社会福祉協議会含む)は21.4%と民間企業が過半を占めているためと考えられます。「介護労働実態調査」の結果から、民間企業を含めた介護職の退職率は一般の労働者の退職率より高いといえますが、共済制度の退職率をみると社会福祉法人に従事する者の退職率は一般の労働者よりも低い状況にあるといえます。

 

図表8。共済加入職員の退職率を他産業と比較したグラフ。「介護労働実態調査」と「雇用動向調査」の退職率と比較

 

 

退職率と有効求人倍率との連動について

図表9は加入職員の退職率と有効求人倍率の推移を示しています。

一般に福祉分野では世の中の景気が良くなると人材を確保しにくくなり、景気が悪くなると人材を確保しやすくなると言われています。図表9からは、加入職員の退職率と有効求人倍率が平成21年度まで長期間にわたりゆるやかに連動していたことがうかがえます。平成21年度以降は有効求人倍率が上昇に転じているなか、共済制度退職率はわずかな上昇、平成27年度からは下降に転じています。このことから福祉施設職員が景気に左右されず、福祉のしごとを選択していることが推測されます。平成21年度は図表6でみた介護職員の退職率が急低下した時期と重なります。連動がみられなくなった要因として推測されることは、福祉施設従事者で、とくに介護職員に対する処遇改善の諸施策の効果が表れたこと、キャリアパスの構築などの個々の社会福祉法人の経営努力があったこと、などが考えられます。

 

図表9。共済加入職員の退職率と有効求人倍率の推移(昭和47年度から平成28年度まで)

 

ただし有効求人倍率は地域差も大きいことから平成28年度の都道府県別の共済制度退職率と平成28年4月の有効求人倍率を図表 10にお示しします。

都道府県により有効求人倍率が高いにもかかわらず退職率が低いところがあり、また、その逆のところもあります。ご自身の施設所在都道府県の状況を確認してみてください。

 

図表10。平成28年度、都道府県別の有効求人倍率と共済制度退職率を比較した棒グラフ

 

 

女性や潜在有資格者が働きやすいライフスタイルにあった多様な働き方の実現を

従事者確保による施設の安定的な経営に向けて

これまで各資料でみてきたように、加入職員の退職率は一般の従事者よりも低く、特に介護職員については近年急低下しそれを維持しています。しかし保育士については、退職率は下降傾向にはあるものの、介護職員と比較すると高く、年齢の分布からみると、一度離職した者が従事者として戻ってきていないことがうかがえました。 人材の確保・定着は福祉サービスの安定的な提供や質の向上にもつながる基本的で重要な事柄ですが、生産年齢人口の減少とともに、確保は年々難しくなってくるものと考えられます。

保育士の処遇改善については、キャリアアップの仕組みの構築、保育士のキャリアに応じた加算などが実施されています。今後の人材確保のためには、一度離職した潜在有資格者が再就職できるような働きやすい環境づくり、とくに福祉施設従事者の3/4を占める女性が子育てや家庭との両立ができるような職場環境づくりも重要な要素になると思われます。

厚生労働省による推計では潜在保育士(保育士資格を持ち登録されているが、社会福祉施設等で勤務していない者)は76万人となっています。 人材確保について施策面では、平成28年3月31日に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」において、平成29年4月から離職した介護福祉士には、住所、氏名等を都道府県の福祉人材センターに届け出ることが努力義務とされるなど、一度離職した者への「呼び戻し」の策が実施されています。保育士についてもライフスタイルやライフステージに応じた働き方ができるよう「短時間正社員制度」が提唱されています。

各施策、社会福祉法人の経営努力等が今度どのように効果をあらわすのか、共済制度の各種資料により従事者に関する動向が分かりましたら、ご報告していきたいと思っています。

 

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